Part2|材料研究の中核へ
つなぐNIMS
材料の性質を精密に測定する最先端装置群や、測定されたデータを蓄積し活用するための材料データプラットフォーム。
材料研究や素材産業を躍進へと導く、日本の財産だ。いま、日本全国に点在するそれら装置や研究データを統合し、日本全体のデータインフラを構築することで、マテリアルイノベーションの創出を狙う国家プロジェクトが進行している。
その中核として、装置や研究データをつなぐ役目を担うNIMS。
データを“つくる・ためる・つかう”、それぞれにおけるミッションと連環強化を狙った第5期の新たな運用体制とは。
出村雅彦Masahiko Demura
技術開発・共用部門 部門長
Topic 1 // 研究データをつなぐ
データ戦略の中核を担い、日本のマテリアル革新力を強くする!
データ駆動による材料開発の源泉「DICE」
データを活用し高効率・高速に探索を行う「データ駆動型」の材料開発。その実施に不可欠である、高品質データを大量に集約し活用するための材料データプラットフォームの構築がNIMSで進んでいる。その名も「DICE*1」。データの効率的な収集から、取り出しやすいデータ構造による蓄積と可視化、そして最先端のAIによる解析まで「データの活用しやすさ」を徹底追求した“エコシステム”だ。
*1 DICE…「Digital Innovative Collaborative Ecosystem for materials」の略称。第4期、「統合型材料開発・情報基盤部門(MaDIS、2017~2022年度)」内に設置された「材料データプラットフォームセンター(DPFC)」が構築に着手し、2020年6月「DICE」として公開した。DPFCは第5期から「技術開発・共用部門」内に「材料データプラットフォーム(DPF)」として再編され、「DICE」の運用・構築を継続している。
2010年代半ば、日本のデータ駆動型材料開発の黎明期といえる時期にNIMSは自らを実験場としていち早くデータ科学をマテリアル研究に導入。さらに、日々の研究現場から生まれる材料データを収集する手法や材料データベースの開発・整備を進め、材料データプラットフォームを築いてきた。データを“つくる・ためる・つかう”という連環の実践と言える。そして、この取り組みを全国へと広げるべく、文部科学省(以下、文科省)が全国の研究機関や大学を巻き込む一大構想を打ち出した。
NIMSのデータ戦略を全国へ!「マテリアルDXプラットフォーム構想」
文科省から打ち出された「マテリアルDXプラットフォーム構想」は、データを“ためる”「DICE」に加え、データを“つかう”「データ創出・活用型マテリアル研究開発プロジェクト(DxMT)」と、“つくる”「マテリアル先端リサーチインフラ(ARIM))」事業が三位一体となり、連環を描く。その中でNIMSは「データ中核拠点」に位置づけられ、各事業を推進すると共に、全国の研究機関・大学から効率よく安全にデータを収集・共用するインフラの構築を担う。その実現に向けてさまざまな機能を「DICE」に実装してきた。
その1つが、2023年1月にリリースされた「RDE(Research Data Express)」。遠方の実験装置からデータをオンラインで登録するだけで、自動的にフォーマットの共通化やメタデータ抽出といった処理が施され、“使えるデータ”として「DICE」に蓄積されるという画期的なシステムだ。さらに現在、蓄積したデータを自在に活用できるAI解析システムの構築を進めるなど、その進化は止まらない。
マテリアルDXでイノベーションを生み出す!
一方で材料同様、データは使われてこそ。2022年度に本格始動したDxMTでは、「DICE」をフル活用することで5つの材料領域でデジタルトランスフォーメーション(DX)*2を推進し、日本全国でデータ駆動による材料研究を“当たり前”にしていく。その中でNIMSは、5つの代表機関から成る「データ連携部会」の中核を担う。DxMT内のDXを推進し、異なる材料間で共通する特徴量を抽出するという挑戦的な課題に挑み、領域を超えたデータ活用の事例創出を目指す。
DxMT・DICE・ARIM、三位一体のマテリアルDXプラットフォーム構想の中核を担うNIMS。ここから巨大な渦が生まれ、イノベーションが巻き起こる日を待ち望む。
*2 DX…デジタル技術を浸透させることで、物事をよりよい在り方へと変革すること。
