研究ツールのオーダーメイドというスタートアップ支援の新戦略!~SIP第3期はじまる~

起業しても成長には長い時間と多額の投資を要すると考えられてきた素材産業分野。その打開に「データ駆動型ツールのオーダーメイド」という画期的な支援で挑む、内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」第3期のプロジェクトがいよいよスタート! その戦略をひも解く。

木場祥介氏Dr. Shosuke Kiba

SIP プログラムディレクター ユニバーサル マテリアルズ インキュベーター株式会社(UMI) 代表取締役パートナー


新材料・新技術の開発から事業の黒字化までに20~40年もの時間と多額の投資を要する素材産業は、ユニコーン*が極めて生まれにくいと言われている。そこに風穴を開ける支援プログラムがSIP第3期で始まった。プログラムディレクター(PD)は、素材産業への投資経験が豊富なベンチャーキャピタル、ユニバーサル マテリアルズ インキュベーター株式会社(UMI)の木場祥介代表取締役パートナー。サブPDの一人をNIMSの出村雅彦部門長が務め、NIMSは「研究推進法人」として事業を支援する。

*ユニコーン…設立から10年以内で、時価総額が1000億円以上、非上場の技術系企業のこと。

木場PDはこう語る。「素材産業の場合、“小さく産んで大きく育てる”は通用せず、“大きく産んで大きく育てる”のが絶対条件です。本プログラムで3年間集中的に支援し、民間会社の投資が受けられるフェーズまでしっかり成長させていく、それが我々の使命です」。

注目すべきは、支援方法だ。一般的な起業支援は資金提供が中心だが、同プログラムで提供するのは“ツール”だ。

近年、材料開発スピードの短縮を目的にデータ駆動型の研究開発が活発化し、そのソースとなるデータプラットフォームが林立している。NIMSがSIP第1期・第2期で構築してきた「MIntシステム」、産業技術総合研究所(産総研)の「MPIプラットフォーム」をはじめ、研究機関や大学が各々整備してきたものが点在している状況だ。同プログラムでは、それら国が整備してきたプラットフォームを連携させてスタートアップ側に提供するが、単に提供するだけではないと言う。

「社会課題からバックキャスティングして研究者や企業の競争力が最大化するようなビジネスモデルを定義し、それぞれのモデルに応じて、データセットと解析ツールを組み合わせたアプリケーションをオーダーメイドでつくり提供するのです。そのための費用はSIPの研究開発資金で賄います。これらオーダーメイドのアプリケーションは研究機関や大学が所有し、専有使用権をスタートアップに提供します」

代わりにスタートアップ側は、提供者である研究機関・大学に対し株式や新株予約権を発行する。つまり、ユニコーンに成長したあかつきには、提供者である研究機関や大学は大きなキャピタルゲインが得られる。そして、そのゲインを新たな起業支援に回していく――そんな“エコシステム”の構築もまた、先駆的な試みとなる。研究リソースのフル活用と経営指南による徹底支援で、ユニコーンの創出を実現していく。

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木場 祥介 氏Dr. Shosuke Kiba

SIP プログラムディレクター ユニバーサル マテリアルズ インキュベーター株式会社(UMI) 代表取締役パートナー