#1
持続可能社会の実現に向けた機能材料の開発
Project leader
大橋 直樹
Naoki Ohashi

ポテンシャルで終わらせない。
有力物質の能力を引き出す
理論上、優れた性質を持つと言われる物質も、その実力を発揮できるか否かはつくり手の手腕が試される。特に半導体素子では結晶中の欠陥や、異種材料との接合構造の制御が特性を大きく左右する。本プロジェクトでは、シリコンを大幅に超える耐圧性や耐熱性を持つことから、高出力かつ省電力な次世代パワーエレクトロニクスの構成材料として有望視される「窒化ガリウム(GaN)」や「ダイヤモンド」、「酸化ガリウム(Ga2O3)」などについて、高純度な結晶成長技術の開発や、素子化に向けた接合面の構造制御、微細加工技術の開発を目指す。また、結晶中の電子状態を正確に捉える解析技術を開発するほか、高純度な結晶であればこそ立ち現れる物理的・化学的な性質について探究を深め、有力物質の能力最大化に挑む。

イノベーションの萌芽が宿る
新たな物質を創り出す
社会課題解決の糸口を求めて、世の中にない新物質や新結晶構造の設計のほか、既存の結晶の改質によって新たな機能を引き出すというアプローチにも力を注ぐ。たとえば、水素の陰イオン(H−)を高速に輸送するという稀有な特性を持つ「酸水素化ランタン」や、安価な非毒性の元素で構成されつつ赤外線に対する鋭敏な応答を示す「酸ケイ化カルシウム(Ca3SiO)」はその一例だ。それら新物質の用途開拓のほか、層状物質である粘土のイオン吸着性を利用した有害物質の回収など、資源の循環を促す材料の開発を推進する。一方、研究人口が減少をたどる中、「研究の持続可能性」にも着目。組成の少しずつ異なる薄膜を連続的に自動作製する装置の構築から、人工知能(AI)によるデータ収集や解析まで、人手によらない研究手法の確立にも注力している。

#2
革新的光材料創出のための基盤研究
Project leader
島村 清史
Kiyoshi Shimamura

結晶の組成や構造を設計し、光をあやつる
バルクフォトニクス
材料が持つ光の透過や発光といった光学特性は、材料を構成する物質本来の物性に加え、結晶同士の界面の構造や粒子の凝集状態など、さまざまな要因により変化する。そこで、赤外線センサの窓材として応用が期待される「透明セラミックス」開発では、強磁場を使い結晶方位を特定の方向にそろえる手法などを駆使し、透明性と機械的特性の両立に挑む。また、光の波長変換や強度調整に不可欠な「光学単結晶材料」開発では、酸化物やハロゲン化物、窒化物などの材料系を対象に、高品質かつ低コストな単結晶成長技術の確立を進める。照明や液晶パネルの光源となる「蛍光体」開発では、高輝度化や再現色域の拡大を目指し、無機材料から有機-無機ハイブリッド材料まで、多彩な材料設計を展開する。さらに、蛍光体粉末から有力な粒子を自動選別する診断システムの構築など、物質探索の効率化も推進中だ。

光のふるまいをより鋭敏に制御する
ナノフォトニクス
比較的大きな結晶における光の制御が中心となるバルクフォトニクスに対して、ナノスケールの物質と光との相互作用という、極めて小さな舞台における光のふるまいを制御する「ナノフォトニクス」。その代表例である「メタマテリアル」は、光の波長より微小な周期構造を基板表面につくり込むことにより光の屈折や強度の操作を可能とする材料で、赤外線検出器やバイオセンサなど多様な応用を目指し、ナノ構造の開発を進めている。また、高感度な赤外線センサを実現する半導体素子開発のほか、量子暗号通信における情報の担い手、“もつれた”光子のペアを発生させる光源「量子ドット」の作製手法を探究。さらに、NIMSが誇る超高純度ダイヤモンド合成技術の高度化により、超高感度な量子センサの実現を目指すなど、社会システムを根本的に変え得る光学材料の開発に挑む。
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