Project leader

渡邊 誠
Makoto Watanabe

極限環境に打ち克つ
先進的構造材料の設計

巧みな材料設計により極限環境を克服するという戦略において、NIMSが2008年に開発し、航空機のジェットエンジン部材に採用された「ニッケル基超耐熱合金(Ni基超合金)」は、代表的な成功例と言っていいだろう。本プロジェクトではそれを発展させ、希少元素の利用量を抑制しつつも従来と同等の耐熱性(≃1100℃)を示す次世代Ni基超合金を開発する。また、大型ビルへの採用実績を持つ耐震材料「制振ダンパー」の長寿命化に向けて金属疲労の現象解明に取り組むほか、マグネシウムやアルミニウムといった「軽量金属材料」の加工性向上などに挑み、軽量化の要請に応えていく。さらに、外部から加わる刺激によって分解可能な「高分子系複合材料」の開発や、「セラミックス基複合材料(CMC)」の耐熱性向上など、金属にはない利点を備える非金属の開発にも力を注ぎ、脱炭素社会の実現に弾みをつける。

Ni基超耐熱合金製の航空機エンジンのタービン翼。(photo : Naohiro Tsukada)

特性を最大限に引き出す
製造プロセスの開発

溶かした金属の冷却速度や、加工法の選択、熱処理の温度やタイミング……。それら製造プロセスに応じて金属の微細組織は様変わりし、材料特性が決定づけられる。つまり、求める材料特性を得るためには製造プロセスの適切な制御が不可欠だ。本プロジェクトでは特に、異種材料を組み合わせて単一材料より優れた特性を引き出す「マルチマテリアル化」のプロセスにフォーカスする。異種材料との接合に適した界面構造を導く塑性加工や熱処理手法のほか、材料同士を“つなげる”技術として、貼って剥がせる接着技術や、異なる金属の界面で生じやすい腐食を抑制するコーティング技術などの開発を推進中だ。さらに、近年注目を浴びる金属積層造形技術の特長を生かした材料設計にも取り組む。それら研究開発には、データ科学や数値解析を積極的に活用し、プロセス・結晶組織・材料特性を連続的に予測する技術の確立にも挑む。

「レーザ粉末床溶融結合法」で積層した造形材。

Project leader

片山 英樹
Hideki Katayama

材料の特性を見極めて信頼性を担保
進化する材料評価試験

金属材料の劣化を招く要因として代表的な「クリープ」「疲労」「腐食」。NIMSではそのメカニズム解明と共に、系統的に各種材料のデータを取得する材料評価試験を長年継続してきた。そして今、産業界のニーズを踏まえて新たな評価手法の開発を進めている。たとえば、金属積層造形材を対象としたクリープ試験や疲労試験のほか、クリープ試験では、火力プラント内で生じる温度・応力の変動が材料に及ぼす影響の評価手法を開発する。腐食に関しては、AIを活用し、気候データをもとに腐食リスクを判定する予測技術の高精度化を進める。また、金属の溶接部で割れが生じて構造体が脆弱化する「溶接部劣化」の現象解明や、水素エネルギー活用に向けた課題、たとえば金属中に水素が侵入し脆くなる「水素脆化」、液体水素の保持に要する極低温下で金属疲労が顕著に進む「極低温疲労」の克服に向け、材料評価手法の確立にも取り組む。

鉄を腐食させるさび。

劣化や特性発現はなぜ起こる?
現象解明や劣化予測を支える高度基盤

金属材料の劣化や特性発現のメカニズムを理解するためには、幅広いスケールで生じる現象と、材料特性との相関関係をひもといていく必要がある。その点、最先端解析装置による観察やコンピュータシミュレーションは、構造材料研究センターで推進するすべての研究課題にとって不可欠な共通基盤だ。本プロジェクトでは、各種電子顕微鏡をベースに3次元解析をはじめとした高度解析技術の構築を進めるほか、ナノからマクロまで幅広いスケールの組織を連続的に予測するシミュレーション手法の開発など、予測技術の高度化を推進する。また、鉄鋼材料の強化機構の解明に向けて、透過型電子顕微鏡(TEM)による結晶の変形過程のその場観察などを実施し、転位や結晶粒界などの格子欠陥が力学特性に及ぼす影響に迫る。