Project leader

館山 佳尚
Yoshitaka Tateyama

再生可能エネルギーの最大限利用へ
電池材料

「リチウムイオン電池」が市場投入されて30年以上、いまだエネルギー密度とサイクル寿命の両立という点で、その性能を上回る蓄電池は登場していない。片や、社会では電気自動車(EV)の需要が急増。蓄電池の高容量化や長寿命化、安全性の向上は喫緊の課題だ。本センターは「先進リチウムイオン電池」を含む、次世代蓄電池の研究開発に注力している。その筆頭候補は、イオンが伝導する固体物質で構成された「全固体電池」だ。ポテンシャル発揮の障壁となっている固体界面のイオン伝導性を高めるため、界面現象の解明や接合プロセスの最適化、材料探索などを進める。また、液体電解質を用いた蓄電池としては、重量エネルギー密度が圧倒的に高い、つまり軽くて容量が大きい「リチウム空気電池」や、資源豊富な元素を用いた「元素戦略電池」など、多彩な革新電池の提案からデバイス化へ挑む。

電気化学測定中の「リチウム空気電池」。

創エネルギー技術としては、太陽光を電気に変える機能を持ちフレキシブル化も可能な「ペロブスカイト太陽電池」の研究開発を進める。発電効率と耐久性の向上に向けた材料設計やその構造化、結晶シリコン太陽電池とのタンデム化や、有毒元素である鉛の削減といった課題に取り組んでいる。そして、本センターでは研究開発を社会実装へと結実させるべく、産学官連携も精力的に推進している。例えば、基礎研究における水平連携の場である「全固体電池MOP」や、蓄電池に関する複数の国家プロジェクトに参画。センター内にはJST事業を推進する「先進蓄電研究開発拠点」を置くほか、次世代蓄電池の研究開発に必要な機能のほとんどを網羅した共用インフラ「蓄電池基盤プラットフォーム」を整備し、人材育成を含めた日本の蓄電池開発の先導を強化していく。

「マグネシウム電池」のコインセル

水素エネルギーへの大転換を支える
水素関連材料

水素エネルギーへの大転換に向け、水素インフラの整備が急がれる。水素製造技術としては、水を電気分解して水素を取り出す「水電解」用の電極触媒材料の探索に取り組むほか、天然ガスの主成分であるメタン(CH4)と二酸化炭素(CO2)との混合ガスから高純度水素を分離可能な触媒材料を開発し、ラボスケールの水素製造システムを構築。水素分離の実証に成功し、さらなる規模拡大を狙う。

高純度水素の製造を可能にする「ニッケル-根留触媒(Ni#Y2O3)」。

また、第4期に引き続き、水素の貯蔵・運搬性を高めるために気体水素を液化温度(-253℃)まで冷却する「磁気冷凍システム」の高性能化に精力を注ぐとともに、それを構成する材料の研究開発を推進中だ。より強力な磁場を発生させる「超伝導磁石」の開発や、吸発熱の源である「磁気冷凍材料」に耐水素性を付与するコーティング技術の開発はその一例だ。また、超伝導材料の線材化技術により、液体水素を燃料とする電動航空機への貢献を目指すなど、水素社会の基盤となる材料・技術の開発に尽力している。

バルク材料を深さ50nm程度まで非破壊で分析可能な「硬X線光電子分光(HAXPES)装置」

先端計測、理論計算、自動実験―
複雑な物理化学現象に迫る高度基盤技術

多様な物質が高密度で充填された電池の内部では、充放電反応に伴い複雑な物理化学現象(活物質の化学反応、結晶構造変化、応力集中など)が発生する。そうしたマルチスケールの現象を理解し、高性能・長寿命な電池材料の設計指針を示す上で、先端計測技術や理論計算、データ科学というアプローチは有効だ。本センターでは、充放電中や材料合成中などいわゆる実働環境下における「その場電気化学計測」の高度化や、材料内部の多様な界面における電子やイオン・分子のダイナミクスに関する理論計算手法の開発、それらデータの人工知能(AI)解析に向けたデータ駆動型手法の開発を進めている。また材料探索には、自動実験ロボットやAIを積極的に活用している。リチウムイオン電池やリチウム空気電池用の電解液探索では、電解液の調合から電池セルの作製まで全自動化。さらに、AIによる電気化学測定データの解析・提案というハイスループットな材料探索サイクルの確立を進めている。こうした多彩な技術の連用により、基礎学理の構築を加速していく。