試料ホルダーの先端、わずか1×2cmほどのスペースに組み込まれた繊細な機構。ひときわ目を引く、クラゲのような形の銅製ハットからは2本の探針がのびる。川本直幸が開発した温度計「ナノ熱電対」だ。ハットの根元に抱えた球を支点に、50億分の1メートルの精度で3次元的に駆動できる。川本はこの先端を試料のナノ領域に接触させたうえで、TEMの電子線で試料を加熱。2018年、世界で初めて複合材料内の熱伝導経路の直接観察に成功した。さらに2023年には電子線をパルス化し、試料に周期的な熱の波を発生させる手法を開発。試料を伝わる熱の大きさと速さの同時計測にも成功している。ちなみに、探針は電解研磨で先端径8nm まで研ぎ澄ましたクロメル(Cr-Ni 合金)とコンスタンタン(Cu-Ni 合金)。温度分解能は10-2 K。

(写真・塚田直寛)