Vol.25 No.1
Mission技術開発・共用部門の2つのプラットフォームが担うミッション
#1
材料創製・評価プラットフォーム
Project leader
川田 哲
Satoshi Kawada

充実の共用装置と伴走支援、
だから見つかる突破口
材料創製・評価プラットフォームは、NIMSが保有する先端的な分析・評価装置や材料創製装置を幅広い研究コミュニティに広く共用することにより、研究開発を支援しているオープンな組織だ。外部ユーザーに対しては、「NIMS Open Facility(NOF)」と「NIMS-ARIM(下参照)」という2つの窓口を通じ、装置を提供している。
こうした装置共用事業はめずらしいものではないが、NIMSが提供するサービスを唯一無二のものとしているのが、装置の利用をサポートするエンジニアの存在だ。その支援は、単なる装置のオペレーションにとどまらない。装置の適正なメンテナンスは言わずもがな、新たな試験技術を開発したり、研究者とデータの解釈について議論したりと、ともに試行錯誤する。特に、物質・材料の専門研究機関であるNIMSには、多彩かつ最先端の物質・材料に関する相談が寄せられる。そのなかで、エンジニアたちは研究動向を敏感にとらえ、技術のアップデートを重ねているのだ。当プラットフォームの理念は「物質・材料研究における課題へのソリューションを提供すること」。研究の質と効率を向上させるパートナーとして、研究者と同じ方向を見据えて走りつづける。

#2
材料データプラットフォーム
Project leader
源 聡
Satoshi Minamoto

データの力で研究活動を徹底支援!
NIMSは、デジタル技術を活用した材料開発の加速を目指し、産学の高品質な材料データの収集・蓄積・流通・利活用を可能にするデジタルエコシステムの開発を進めてきた。初めはNIMS内に閉じたデータ基盤として運用を開始したが、いまやその役割は、国家的なデータ駆動戦略「マテリアルDXプラットフォーム構想(下囲み参照)」の基盤へと拡大。NIMSはこの構想の柱の一つ、「データ中核拠点(MDPF)」事業の唯一の実施機関となり、主力サービスである世界最大級の材料データベース「MatNavi」の拡充や、解析プラットフォームの開発を推進している。
この事業を一手に担うのが、材料データプラットフォームのエンジニアたちだ。機械学習や画像認識といった最先端のデータ科学手法を駆使し、高度システム開発を行う専門家集団である。材料開発におけるDX化の最善手を見いだすべく、データの創出と利活用が進む現場において研究者と緊密な対話を重ね、革新的なサービスの具現化に挑んでいる。
一方、高品質な材料データの創出も当プラットフォームの重要なミッションだ。長期的・継続的にデータを創出する実地試験として、「クリープ試験」や「疲労試験」、「腐食試験」に加え、2024年には「水素環境下材料試験」も始動した。さらに、NIMS研究者の大規模数値計算によるデータ創出に不可欠なスーパーコンピュータの運用も重要なサービスの一つだ(下写真)。創出されたデータは、データ基盤と併せてDX化の推進力を生み出している。

マテリアルDXプラットフォーム構想
内閣府が策定した「マテリアル革新力強化戦略」に基づき、文部科学省主導のもと、物質・材料研究のデジタル変革(DX化)を目指す取り組み。産学官の材料データの収集・蓄積・流通・利活用の実現を、三位一体の事業運営によって目指す。
3事業の運営主体はすべてNIMSの技術開発・共用部門内に設置されており、運用ルールの策定やシステム開発などの面で緊密な連携を実現している。

事業❶
マテリアル先端リサーチインフラ(ARIM)
政府の装置共用事業のもと、全国の大学・研究機関に整備された先端装置群。「ARIM」は、その共用事業を引き継ぐとともに、装置から創出される材料データの収集・蓄積という新たな役割を担い始動した事業だ。2025年度より、いよいよそれらデータの共用を開始する。このなかでNIMSは事業全体を統括する「センターハブ」として運営の最適化を推進。加えて、NIMSの共用装置の利用窓口「NIMS-ARIM」を運営している。
ユーザーがNIMS-ARIMを通じて共用装置を利用するメリットは、同じ装置でも「NIMS Open Facility」を経由する場合より安価に利用できることだ。ただし、ARIMのウェブサイト上で「利用報告書」を公表することが条件となる(公開利用型)。データ提供は選択制で、提供可の場合には最も安価な利用料金が適用される*。
* 一部、データ提供非対応の装置あり


事業❷
データ創出・活用型マテリアル研究開発プロジェクト(DxMT)
“使われてこそ”のデータを物質・材料開発に活用し、さらに自らもデータを創出する事業として立ち上がったのが「DxMT」だ。参加機関は、東北大学、東京大学、東京科学大学、京都大学、NIMSの5つ。各機関に設置された推進拠点では、それぞれにターゲット材料を設定し、データ駆動型研究を実施している。
この5拠点がDxMTのもとに集う意義を生み出しているのが、NIMSが中核機関を務める「データ連携部会」の存在だ。その役割は、連携の横串を通すこと。具体的には、5拠点に共通する課題を洗い出し、汎用的かつ先駆的なデータ駆動型手法の開発・共有化や計測条件の共通化などを進めることにより、単独では成し得ない成果へと導く。さらには、セミナーを開催するなどデータ駆動人材の育成にも尽力。NIMSはDxMTを推進するエンジンとなり、マテリアルDXプラットフォーム構想の実現に貢献している。

