Vol.25 No.1
TOPICS技術開発・共用部門のニュース
#1
水素社会実現への一歩!
低温・高圧が再現可能な「水素環境下材料試験施設」が完成

NIMSは2024年10月、水素環境におかれた材料が低温・高圧下で示す機械的特性を評価できる試験設備を設置し、運転を開始した。特筆すべきは、20 K(-253℃)〜193 K(-80℃)という低温環境をつくり出し、かつ常圧〜10MPaの圧力にできること。この温度・圧力領域の水素環境下材料試験設備は、世界でも類をみない。
本施設の完成により、液化水素の輸送・貯蔵に欠かせない低温・高圧環境を再現し、液化水素や低温水素ガスに対する材料の耐久性や、引張・疲労・破壊靭性などのデータを得ることが可能になった。水素インフラを構成する材料の選択肢が広がれば、水素エネルギーの普及を阻む供給コストの低減が期待できる。というのも、材料を選択する際、水素ガス環境で使用する場合には水素脆性に、液化水素環境で使用する場合には低温脆性に配慮する必要があるが、そうした過酷な条件に耐える材料は限られており、水素インフラの整備・運転コストの大幅な削減は望めない状況にあるのだ。本設備では2026年度から、本格的な機械的特性データの取得と、データの提供を開始することを目指し、現在は運用技術の確立を進めている。NIMSは、水素社会の屋台骨となる材料の創出を、評価試験の側面から支えていく。
〈関連情報〉プレスリリース:水素社会実現への一歩!低温・高圧水素環境下での材料特性評価設備が完成
#2
国産耐熱金属材料の信頼性向上の原点
クリープデータシート事業に関わる3件が「未来技術遺産」に登録

事業発足の経緯を示す唯一の資料。

500台の本体フレームは設計当初のもの。

約12,000本のクリープ破断試験片。
NIMSが1966年から推進している「クリープデータシート事業」。鉄鋼の信頼性の基盤を築き上げてきた長年の功績が評価され、この事業にまつわる資料が、2024年度「重要科学技術史資料*(未来技術遺産)」に登録された。
*重要科学技術史資料…科学技術史資料の保存と次世代への継承を目的として、国立科学博物館が毎年度選出。愛称「未来技術遺産」。
「クリープ試験」では、高温状態にした鉄鋼材料の試験片を両側から一定の力で引っ張り、変形の大きさや破断までの時間を測定する。試験結果は「クリープデータシート」として公表。火力発電プラントなど、きわめて高い安全性が要求される設備を設計するうえで拠りどころとなっている。
登録された資料は、①日本鉄鋼協会「クリープ委員会」議事録及び関連資料 ②クリープ試験機とその設計図面類 ③クリープデータシートとその記録類、クリープ破断試験片の3件。特に、稼働中の機器が登録されたのは、クリープ試験機が初めてとなる。また、データシートに付随する「記録類」には、試験前後の試験片の寸法や試験中に生じた事象(停電、地震)などが事細かに書き込まれており、管理の厳格さが際立つ。
技術者たちのたゆまぬ努力により、ゆるぎない信頼を確立してきたクリープデータシート事業。NIMSはこれからもそのバトンをつないでいく。
〈関連情報〉プレスリリース:NIMSクリープデータシート事業に関わる3件が「未来技術遺産」に登録