Vol.25 No.2
PICK UP2024年のNIMS発プレスリリースからピックアップ
#1
可視光から近赤外まで変幻自在の発光マイクロビーズ

闇を彩るカラフルな光——実はこれ、同一の粒子からの発光なんです。長尾忠昭博士とバルン・バルマン博士らが開発したマイクロメートルサイズの球「マイクロビーズ」は、照射する光(励起波長)を変えるだけで、発光色(発光波長)が可視光から近赤外光まで変幻自在。単一の物質でこれほど幅広い波長領域をカバーする発光材料は世界に類を見ません。
主原料は、天然由来のクエン酸やポリアミノ酸。現在普及している発光素子に不可欠な希少金属を含まず、1回の加熱プロセスで合成可能です。また、環境負荷が少なく優れた発光特性をもつ材料の代表格であるグラフェン量子ドット(GQD)やカーボンドット(CD)と同様に、マイクロビーズはナノグラフェン構造によって光を生じますが、マイクロビーズならではの利点は乾燥固体にできること。GQDやCDの場合、ナノグラフェンがひしめきあっているため、乾燥して凝集すると光を打ち消しあってしまいますが、マイクロビーズの場合、ビーズ中にナノグラフェンが適度な距離間で分散しているため、発光を維持できるのです。
また、マイクロビーズの発光原理は、ナノグラフェンから発生した光が球の表面に沿って複数の経路で周回し、それらの共鳴により光を放つというもの。これは「ささやきの回廊モード(WGM)」と呼ばれる現象で、ビーズの“個性”に応じて発光スペクトルの特徴が変化します(図)。そこで期待できるのが、識別タグとしての役割。偽造防止用インクやバイオマーカーなど、多彩な応用に期待がふくらみます。

図 マイクロビーズの発光イメージ(左)と発光スペクトルの例(右)
長尾博士とバルマン博士らが開発したマイクロビーズは、照射する光(励起波長)に応じて発光色が変化する。発光スペクトルには、WGM 現象によりシャープな輝線が現れるが、ビーズの形状やサイズなどの個性を反映してピークの位置や間隔、強度などが変わる。そのため、バーコードになぞらえて(波長はバーの分布、強度はバーの太さ)、新しい認証技術としての使用が可能。
NOTE
ささやきの回廊モード(WGM)
ロンドンのセント・ポール大聖堂の中央ドームは直径約34mもの大空間であるにもかかわらず、壁の近くでひそひそ話をすると反対側にいる人に聞こえてしまうという現象が知られています。これは、円形ドームの壁に沿って形成された特別な音波伝搬モードに、ある振動数の音が共鳴し、遠くまで伝わる現象です。電磁線の波である光でも同様にWGM現象 が存在し、本材料でも球の表面に沿って光の波が伝わるWGM現象が生じています 。

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