レーザー積層造形法で作製したフェライト耐熱鋼(改良 9Cr-1Mo 鋼)。

複雑な形状の部品を直接成型できる金属3Dプリンター。しかし、高温・高圧環境で長期間使用される耐熱鋼については、3Dプリンター材の強度や耐久性に関するデータが不十分なため、応用範囲は限定的です。そうしたなか、畠山友孝博士は意外な事実を明らかにしました。3Dプリンターの造形方式の一つ、「レーザー積層造形法」で作製した耐熱鋼が、従来の耐熱鋼に比べて10倍以上のクリープ寿命*をもつことを突き止めたのです。この結果は、650℃で約1万時間のクリープ試験を実施して得られたものです。

その理由を探るため、電子顕微鏡でミクロ組織を観察すると、フェライト相と呼ばれる金属組織を主相とした特異な組織が形成されていました。フェライト相は、クリープ寿命の向上に有利な組織です。従来の耐熱鋼の製法では、溶融した金属が凝固して冷える過程でフェライト相、オーステナイト相、マルテンサイト相の順に変化するため、フェライト相を主相とした組織を得ることは困難です。では、なぜ理想的な組織を形成できたのか。答えは、3Dプリンター特有のプロセスにありました。

レーザー積層造形法では、金属粉末にレーザーを照射し、局所的に溶融・凝固させていきます。このとき、溶融した粉末が秒速100万℃もの速さで冷えることで、フェライト相が他の相に転移する前に凝固していたのです。複雑な形状をつくりながら寿命も延長できる3Dプリンター製の耐熱鋼。NIMSは長時間クリープ試験技術を活かして3Dプリンター材の強度や耐久性を明らかにし、規格化と普及に貢献していきます。

*クリープ寿命…高温状態にした材料の試験片を両側から一定の力で引っ張ったとき、破断に至るまでの時間。

図  レーザー積層造形材のミクロ組織(左)と組織形成メカニズムの模式図(右)。
レーザー照射により溶けた粉末からなる溶融池では、急冷・凝固により、フェライト相が形成される。その周辺(熱影響部)では、通常の熱処理と同様に、オーステナイト相からマルテンサイト相へと転移が起こる。これにより、フェライト相を主相とする二相組織が形成される。

Profile

Tomotaka Hatakeyama

構造材料研究センター
クリープ特性グループ  研究員

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