Vol.25 No.2
PICK UP2024年のNIMS発プレスリリースからピックアップ
#6
仮想空間上に磁石の“双子”。「デジタルツイン」誕生

電気自動車のモーター駆動など、産業界で重要な役割を担うネオジム磁石。しかし、いま利用できる保磁力は理論限界の2割程度に過ぎません。これを引き上げるには、磁石の磁気特性と微細組織との相関解明が欠かせません。しかし、材料開発を後押しするはずの数値シミュレーションが実用レベルの精度に達しておらず、開発の障壁となっていました。
アントーン・ボリャーチキン博士らは、シミュレーション精度を飛躍的に高める新たなアプローチを考案しました。まず、「集束イオンビーム-走査型電子顕微鏡(FIB-SEM)」を用いて試料の3次元画像のセットを取得(図a、b)。そのデータを基に大規模な有限要素モデルを構築するという手法です。有限要素法は、対象をきわめて小さな四面体(有限要素)に分割し、各要素に割り当てた方程式を解く計算手法です。
ここで課題となったのが、SEMでは観察が難しい超微細な組織をどうモデル化するか。磁石の保磁力は、結晶粒を隔てる厚さ2〜4ナノメートルの「粒界相」に大きく影響されますが、SEMでの観察は困難です。そこでボリャーチキン博士は、画像上で結晶粒の境界を特定し、粒界相を挿入するアルゴリズムを開発しました(図c)。このとき組織全体に対し、高品質な四面体の要素に分割するための形状補正など、より正確な近似に向けた処理も施しました。その結果、ネオジム磁石の「デジタルツイン*」が開発でき、減磁やピン止め効果が起こる過程の高精度シミュレーションに成功しました。この手法は、磁石以外の多結晶材料にも適用可能。必ずや材料開発の強力な武器となるはずです。
*デジタルツイン…現実空間で集めた情報を基に、物体を仮想空間上にデジタルモデルとして再現する技術。
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