Research Highlights 03

「セラミックス基複合材料」で 空の材料革命を起こす

耐熱性と軽量性に優れ、航空機エンジンへの一部採用を果たした「セラミックス基複合材料(CMC)」。
耐熱性向上と適用範囲の拡大を目指し、CMC関連材料の性能評価に邁進する垣澤英樹に話を聞いた。


セラミックス基複合材料の躍進

セラミックス基複合材料(CMC)とは、硬くてもろいセラミックスの中にセラミック繊維を混ぜ込み、割れにくくしたものだ。たとえ亀裂が生じても、繊維を含んだ複雑な組織が亀裂の進行を妨げ、予期せぬ即時破断を防ぐ。金属と比べて耐熱性と軽量性に優れることから、特に航空機材料への応用に期待がかかる。垣澤はこう語る。

「2016年に、民間用ジェットエンジンの高圧タービンの一部に非酸化物CMCが採用され、さらに燃焼器内壁などへの適用も期待されています。排気ノズルにも酸化物CMCが使われ始めました。非酸化物CMCの現在の耐熱温度は1200~1300℃ですが、今後さらに高めていく必要があります。そのために我々が注力しているのが、CMCとそのコーティング材料の評価技術の開発です」

高温下でのリアルタイム観察に成功

燃焼温度が高温になるほど、タービンを回転させるための燃焼ガスにより、CMCの腐食が顕著になる。そのため、CMCの表面には「耐環境コーティング(EBC)」が施されている。

「高圧タービンの内部は、離着陸のたびに加熱と冷却を何度も繰り返します。急激な温度変化が繰り返されるとCMCとEBCの熱膨張率が異なるためにひずみが発生し、EBCに割れや剥離が生じることで、CMCの腐食を招きます。しかし、EBCにそのような損傷がいつ(昇温中か冷却中か)、何℃で生じるのかを知るすべはありませんでした。高温になると材料自体が強い輻射光を放つため、観察が困難なのです。そこで我々は、高温下でも観察可能な光学顕微鏡を独自に開発しました(図1)」(垣澤)

図1 独自開発した高温光学顕微鏡の模式図
UVカメラと試料の間に輻射光カット用のフィルタをセット。一方、試料には紫外線を照射し、試料からの反射光をカメラで捉える仕組み。試験片の表面には、独自開発した微細な耐熱パターンを形成した上で、引張負荷をかけながら画像を取得。「デジタル画像相関法」でパターンの変位を画像解析すれば、試験片のひずみ分布が定量化できる。

それにより、垣澤らは世界で初めて、室温~1400℃の連続光学顕微観察に成功した(図2)。さらに「デジタル画像相関法(DIC)」による解析で、ひずみを定量化。EBC中の亀裂発生の瞬間を捉えることにも成功し、次世代EBC開発の足がかりとなる重要な知見が得られた。

図2 高温光学顕微鏡によるその場観察の例
セラミックス表面の観察例。一般的な光学顕微鏡では、高温下では輻射光により像が白飛びしてしまう(上段)のに対し、垣澤らが開発した高温光学顕微鏡では、1400℃まで加熱しても明るさやコントラストの変化のない画像が得られる(下段)。

「人命を預かる材料がセラミックス系に置き換わるのはめったにない“事件”です。ジェットエンジンの開発は欧米が主導権を握っていますが、セラミック繊維は日本発の材料です。材料の置き換えは、日本のこれまでのポジションを変えるチャンスと捉え、研究開発に邁進しています」(垣澤)

実際、垣澤らは、国内重工メーカーとの共同研究を数多く推進中だ。垣澤の目は、まっすぐ実用化を見据えている。

Profile

Hideki Kakisawa

構造材料研究センター
セラミックス基複合材料グループ
グループリーダー