Research Highlights 04

溶接が抱える大問題、 「凝固割れ」の瞬間を捉える!

構造物をつくる上で不可欠な溶接技術だが、溶接中に発生する「凝固割れ」は構造物の寿命低下の一因になっている。柳樂知也は、SPring-8の放射光X線を利用し、凝固割れの発生メカニズムに迫っている。


溶接光で隠れた現象が“見えた”

金属材料の接合部分に融点以上の熱を与えたときに生じる放電現象を利用して、材料をつなぎ合わせる「アーク溶接」。溶接中に発生する欠陥「凝固割れ」は、その抑制に向け50年以上にわたり研究が進められてきたものの、詳しい発生メカニズムは未だに解明されていない。最大の理由は、極めて明るい光源の中で起こる現象である上、溶解した金属の凝固速度が非常に速いため、凝固割れが形成される様子を観察できなかったからだ。
そこで柳樂は、世界最高レベルの高い空間分解能と時間分解能を併せ持つ、大型放射光施設「SPring-8」の放射光X線を利用して、溶接部の「その場観察」を行いたいと考えた。

その場観察とは、試料が何らかの反応を示している最中に生じる現象をリアルタイムかつ詳細に観察する手法だ。柳樂は、金属試料をアーク溶接しながら高解像度に観察できるオリジナルの装置を開発し、SPring-8のビームラインに設置。2019年、NIMSで開発された鉄・マンガン・シリコン合金の溶接部のその場観察を実施した結果、金属結晶の構造が大きく変わる「相変態」と呼ばれる現象が、凝固割れの抑制に深く関与していることを世界で初めて突き止めた(図)。

「放射光によるアーク溶接のその場観察自体が世界初のことであり、観察装置の開発は試行錯誤でした。他の材料を対象に10年以上にわたり培ってきたその場観察技術を活かすことで達成した成果です」(柳樂)

鉄・マンガン・シリコン合金の組成比を変えた2つの試料に対し、スポット的にアーク溶接を施した際に溶融・凝固が生じる様子を、X線イメージング技術により0.02秒単位で撮影した。その結果、溶解から凝固までオーステナイト相のまま推移する場合(上図)には凝固割れが発生した一方で、フェライト相からオーステナイト相へと相変態する場合(下図)には、凝固割れが抑制されることが明らかになった。

凝固割れの観察から予測へ

「我々の最終目標は、凝固割れを一切起こさない溶接技術の確立ですが、まずは凝固割れを低減するための指針の提案を目指します」(柳樂)

また、唯一無二の観察装置から生まれるX線透過像は金属の溶接技術に関する知見の宝庫だ。柳樂は今後、それらをデータベース化すると共にデータ駆動型研究へと展開し、「凝固割れを起点とする破壊のメカニズムの解明につなげたい」と意欲を燃やす。

観察後の試験片。

Profile

Tomoya Nagira

構造材料研究センター
溶接・接合技術グループ
グループリーダー