Research Highlights 05

広範囲かつ微細に3次元で。 材料を観る“目”を研ぎ澄ます

構造材料を長期間使っていくうちに生じる、変形や破壊、腐食といった現象の数々。原徹は電子顕微鏡をベースにした解析技術によりそれらの現象のメカニズムに迫り、さまざまな研究の進展に寄与している。


進化を遂げる電子顕微鏡

ナノメートルからミリメートルまで、幅広いスケールの材料組織が、その特性に影響を及ぼす構造材料。どのような組織が材料特性を支配しているのか。それを明らかにする上で、解析技術の革新は極めて高い意義を持つ。

「そこで我々が進めてきたのが、『直交配置型FIB-SEM』や『PFIB-SEM(タイトル写真)』など、電子顕微鏡をベースとした先端装置と、解析技術の開発です」と原は語る。

これらの装置の特徴は、構造材料の微細組織を、詳細かつ広範囲にわたり、3次元的に観察できる点にある。いずれも、試料の表面をイオンビームで薄く削りながら、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察していく。そうして得られた数百枚にも及ぶ断層画像をコンピュータで再構築することで、試料の3次元組織像が得られる。組成や結晶方位など、多角的な解析が可能だ。

「直交配置型FIB-SEMは2011年に1号機を導入しましたが、より広範囲を詳細に観察したいとの要望に応え、新たに2020年に導入したのがPFIB-SEMです。試料の表面を削る速度を高速化したことで、従来の約1000倍という大体積の3次元組織を観察できるようになりました」(原)

金属疲労の定説を覆した!

原らはこのPFIB-SEMを使って、金属の疲労に関する長年の謎を解き明かした。金属は長時間使用していくうちにミクロな亀裂が成長し、やがて破断に至る。古くから知られる現象でありながらも、破断に至るメカニズムは未解明だった。

「この問題に、疲労特性グループの西川嗣彬主幹研究員と取り組みました。あえて亀裂を生じさせたニッケル基合金を、私たちのグループで観察し、西川が構築したプログラムで3次元化したことで、亀裂が金属結晶のどの結晶面を通って成長しているか、初めて明らかにできたのです(図)」
この成果は、従来の定説を覆す発見として専門家の間で話題を呼んだ。

図 亀裂を加えた合金の微細組織と結晶方位の3次元像

また、NIMSが注力している重点課題の1つに、水素エネルギー関連材料がある。その中で、避けて通れない問題が「水素脆化」だ。水素原子が金属に入り込むことによって金属がもろくなり、破壊を引き起こす現象を指す。今後、原らは材料研究者と共同でそのメカニズムにも迫っていくという。
「水素が吸蔵されている金属と吸蔵されていない金属を比較することで、亀裂の生じ方の違いを解明できるのではないかと期待しています。ほかにも、構造材料開発において“観る”ニーズは尽きません。PFIB-SEMなど最新鋭の武器を駆使して、さまざまな研究の進展に寄与していきたいと思っています」(原)

Profile

Toru Hara

構造材料研究センター
微細組織解析グループ
グループリーダー