Research Highlights 02

グリーンイノベーションを導く バルク磁性材料を

カーボンニュートラルの実現に向け、持続可能で環境に優しい磁性材料のニーズが高まっている。
バルク磁性材料開発において高い実績を持つホセイン・セペリ-アミンに、研究開発の現状を聞いた。


エネルギー問題に資する磁性材料

磁性材料は、電気自動車(EV)、風力発電などのグリーンエネルギー変換に応用され、カーボンニュートラルを達成する上で重要な役割を果たしている。さらに、これらの用途に使用される材料は、希少元素に依存せず低消費電力で高性能を発揮すること、すなわち“グリーン”であることが重要だ。それらの実現には、磁性材料の革新が欠かせない。

ホセイン・セペリ-アミン率いる「グリーン磁性材料グループ」では、主に「永久磁石」「軟磁性材料」「磁気熱量効果材料」の研究開発に取り組んでいる。永久磁石は、EVや風力発電用タービンのモーターにおいて駆動力を生み出す一方で、磁石の保磁力を高めるために添加されている希少元素の削減が課題だ。軟磁性材料は、パワーエレクトロニクスデバイスの中で電気の直流-交流変換を担う機器に組み込まれており、材料の改良によるエネルギー損失の低減が望まれている。また、磁気熱量効果材料は「磁気冷凍材料」とも呼ばれるもので、環境に優しい冷却システムの実現を担っている。

複数の手法を高いレベルで統合

グリーン磁性材料グループの強みは、複数の手法を組み合わせたコンビナトリアル研究アプローチにある。
「我々はバルク磁性材料の作製だけでなく、電子顕微鏡、アトムプローブトモグラフィ、磁区観察などを駆使したマルチスケール解析により、微細構造と磁気特性との相関を解明しています。さらには、計算シミュレーションを組み合わせることで、磁性材料の微細構造を設計し、所望の磁気特性を実現しているのです。実際、永久磁石の分野ではこれらのアプローチにより、高い保磁力をもつ高性能なDyフリー永久磁石の開発に成功しています。また、内田健一が率いるプロジェクトのもと、“横型”の巨大な熱電変換特性を示す永久磁石の開発にも携わっています」(セペリ-アミン)。

しかし、希少元素によらず高性能バルク磁性材料を設計するには複数のパラメーターを同時に最適化しなければならず、複雑な作業となる。そこで有用なのが、データ科学だ。セペリ-アミンらは2022年にスタートしたDXMagに参画し、高性能バルク磁石の開発、さらにはハードディスク(HDD)で情報保持を担う磁気記録媒体の開発にデータ科学を活用している。

「機械学習の援用による微細構造設計は、DXMagプロジェクトにおける我々の研究アプローチの1つです。また、材料の作製プロセスを最適化するため『プロセスインフォマティクス』を適用しています。さらに、鉄・白金(FePt)から成る磁気記録媒体に対し、電子顕微鏡像の深層学習と欠陥や磁気異方性の機械学習に基づいて評価を行う『媒体シミュレータ』を、『磁気記録材料グループ』と共同開発しています。これらのアプローチにより、HDD業界と共同でのFePt媒体のハイスループット特性評価が可能になりつつあります」(セペリ-アミン)

最先端技術とデータ駆動型手法の融合により、研究開発は日々加速している。

Profile

Hossein Sepehri-Amin

磁性・スピントロニクス材料研究センター
グリーン磁性材料グループ
グループリーダー